『鉄血のオルフェンズ』のスピンオフ作品として制作されている『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』。アプリで楽しむことができる作品として、長井龍雪監督をはじめメインスタッフが再集結し鋭意制作中です。そんな『ウルズハント』の展開に先駆けて開始されたリレーインタビュー企画第3回は、作品のシリーズ構成を手掛ける鴨志田一さん。
TVシリーズから作品に携わってきた鴨志田さんが、アプリという媒体での脚本作業をどのように捉えているのかお聞きしました。今回は前・後編2回に渡ってお届けします。

『Z』の再放送を早朝に観てから学校に通っていた
鴨志田さんのガンダム初体験はどの作品だったのでしょうか?
最初に観たのは『機動戦士Zガンダム』ですかね。夕方に初回放送をやっていたときも観ていたんですけど、小学4年か5年ぐらいのとき、早朝に毎日1話ずつ再放送されていたんです。それを観てから学校に行っていました。
早朝に観るにはなかなか重い話ですね。
(笑)。今考えると、どういうテンションで小学校に行っていたのか……。“カミーユ、殴られてたなぁ”と思ったのは覚えています(笑)。
(笑)
さすがにそのぐらいの年齢だと、物語の構造はよくわかっていなかったです。エゥーゴって何? ティターンズって何? って。結局、モビルスーツ戦が楽しくて観ていた覚えがありますね。それから『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』が上映されて、『機動戦士ガンダムF91』は映画館に観に行きました。
なるほど。
僕は『ファースト』(『機動戦士ガンダム』)を『Z』のあとに観たんです。『ガンダム』作品はこの業界に入ってから、いつか関われたらいいなと思っていたタイトルだったので、『鉄血のオルフェンズ』で声を掛けて頂いたときは、思ったより早くそのときが来た!と思いましたね。
媒体が変われば、当然そのテキストの書き味も変わる
では、今回『ウルズハント』でシリーズ構成を担当することとなった経緯を教えてください。
『ウルズハント』になる前の段階で、プロデューサーの小川(正和)さんからゲームの試作に協力してくださいという話がありました。そのときは、新しいメカデザインの名称や設定を決めたり監修する役割でした。TVシリーズでは設定考証もやっていましたし、外伝『月鋼』にも参加していたので、「あいつが1番詳しいだろう」とお鉢が回ってきたのだと思いました(笑)。
外伝も含めて『鉄血のオルフェンズ』世界の全体を把握されているだろうと。
そうですね。そこからは、上がってきたメカデザインを見て、名前をこうしましょうと提案するようになり、それが作業のスタートといえばスタートですね。その後、少し間が空いたので、試作段階で夢幻と消えてしまうのかなと思っていたら(笑)。
そこから『ウルズハント』として始動するわけですね。
試作段階で丸一年くらい経過した頃、正式にアプリとして動くというお話を頂きまして、そのときにシナリオで参加してくださいと。そのときは、ゲームを進行させる上で必要となるテキストを作成するくらいなのかなと思ったのですが、突然『ウルズハント』のお話が僕の手元にやってきまして(笑)。
ではある程度物語の骨子が固まった段階で鴨志田さんにお話があったのですか?
そうでしたね。その後具体的に『ウルズハント』の構成がスタートした形です。とはいえボリュームに関して、当初はまだまだ小さいものでしたけども。
現在上がっているシナリオを拝見しましたが、アプリとは思えないほどボリュームがありますよね。当初は長編ではなかったのでしょうか?
当初は、もうちょっとコンパクトに作ることになるだろうと想定していました。アプリにするにしても、毎月更新があるような構造の中で、それなりの尺を持ったアニメーションを配信するというのは、既存のアプリゲームでもほとんど前例がないですからね。
確かにそうですね。
やりたくても大変なのでなかなか実現できない形です。僕も昔はゲーム業界にいた人間ですので、そのパッケージで“この企画は、果たして実現するのだろうか?”と思いながら作業をしていたのは事実です。
TVとアプリというメディアの違いがシナリオに反映されることはありますか?
媒体が変われば、当然そのテイストも変わります。アニメーションであれば、誰が誰に向けて話しているのかは映像を観ればわかりますし、音声で補完できることも多い。ですが、これがゲームのようにテキストベースで読み進めるものになると、誰が誰に話しかけているのかを明確にしないといけない。言葉のニュアンスや感情表現だけでなく、そこに情報も付け加えることでキャラクターをみせるような書き味にしています。
ウィスタリオの明るいキャラクターが、全体のテイストにも反映される
TVシリーズは、シリアスかつヘビーな内容でしたが、アプリとしてゲーム要素も含む『ウルズハント』は、メディアに合わせたテイストの違いなどはあるのでしょうか。
物語の進め方に関する部分は、TVシリーズと敢えて変えようという意識はないですね。どちらかというと、TVシリーズの主人公が三日月・オーガスとオルガ・イツカであるのに対し、『ウルズハント』ではウィスタリオ・アファムというキャラクターを中心に物語が進んでいきます。中心となるキャラクターが変わったことにより、全体の雰囲気は、TVシリーズに比べると明るいものになると思います。
シリアスすぎない話になると。
それは最初に長井(龍雪)監督と話し合ったところでもありました。
舞台も火星や地球といったTVシリーズで描写された場所ではなく、金星宙域のコロニーから始まります。このあたりもTVシリーズとの違いを意識されているのでしょうか?
長井監督の意図を直接聞いたわけではないですが、舞台は変えたかったんだと思います。火星を舞台にしてしまうと、どうしてもTVシリーズに登場する少年たちの、『鉄血のオルフェンズ』世界の中でも特にシリアスな場面を描写しなければならなくなるので。
では今回は、戦闘にしてもキャラクター同士の掛け合いにしても、TVシリーズよりも少し明るさが増していきそうですね。
キャラクターの出自でいえば、ウィスタリオは教育もある程度受けていますし、自分を支えてくれる大人たちがいる環境で育っています。そういう意味では、わりとまっとうに成長してきた子ではあるので、それは大きな違いになってくるかと思います。
鉄華団の団員ほど、悲惨なバックボーンを持っているわけではなさそうですね。
といっても、恵まれた環境で教育を受けている子供ではないので、喋り口調が上品、とかではないです。三日月やオルガに比べればまっとうかもしれませんが、金星自体も、みんなから忘れ去られているくらいの場所なので、そこで生活している不満はウィスタリオにもあります。しかも状況的にはどんどん衰退してきている様子を、彼は幼い頃から見てきています。
現状への不満があるわけですね。
彼は周りの状況もある程度見えているキャラクターです。一方で、ちゃんと子供らしい前向きさも持っているので、変な澱みがなく、明るい感じがありますね。それは全体のテイストにも反映されています。
鉄華団とウィスタリオが何らかの形で影響を与え合うような形ができれば
ウィスタリオを支える役割としてデムナー・キタコ・ジュニアという世話役がいる他、ウルズハントの水先案内人としてコルナル・コーサの存在が明かされています。
彼らに関しては、「こういうキャラクターを登場させたい」という長井監督のアイディアがもともとありました。そこから膨らませていった形ですね。
特にコルナルは、ウルズハントのキーパーソンになりそうですね。
作品名にもなっている「ウルズハント」は賞レースでして、彼女はその水先案内人として登場します。ウィスタリオと行動を共にすることで、互いに感化し合うような関係性が描ければと思っています。
TVシリーズのキャラクターが登場してくることもあるのでしょうか?また登場させる場合、どのように絡めていこうと考えていますか?
お客さん的には、鉄華団のメンバーが見たいと思うのは当然ですよね。ただ、無理やり登場させて、辻褄の合わないようなことにはしたくないので、やり方は慎重に考えています。両者が何かしらの影響を与え合えている形にできれば面白いし、ベストかなと。是非楽しみにして頂ければと思います。
『鉄血のオルフェンズ』世界全体についてはどのように描写しようと考えていますか?
この世界は、基本的にギャラルホルンが統治している世界です。なので、世界中、どこに行ったって彼らは存在しているんですね。『ウルズハント』はTVシリーズの第1期と第2期の間からスタートするので、少しだけギャラルホルン内もごちゃごちゃしている時期です。そういうところも、もう少し深く掘り下げるような機会があるかなと思います。加えて、テイワズやタービンズといった組織にも触れることになると思うので、TVシリーズをご覧になられていた方に反応して頂けるような取っ掛かりは、随所にあると思います。
モビルスーツに関しては、これまで構築した設定の枠を大事にしています
メカニック周りの設定に関しても、伺っていきたいです。
主役機であるガンダム・端白星は、『ウルズハント』の制作が本格的に始動してから今のデザインになりましたね。
ガンダム・フレーム機を新たに追加するにあたって、アイディアや設定面で協力されたのでしょうか?
端白星に関しては、主人公機である宿命を背負わせた名前になっています。これまでのネーミングルールとなぜ違うのかは、物語の中で徐々に明らかになっていきますので……としか、今は言えませんね。
ガンダム以外のモビルスーツにはどのようなアイディアを入れようと思われましたか?
基本的な部分としては、これまで構築した設定の枠は大事にしようと考えています。例えばロディ・フレーム機はヒューマンデブリのグループが使いますし、テイワズの息がかかってるところであれば、彼らが保有しているフレームを使います。地球の四大経済圏の中でも、それぞれ主流になっているフレームがあるので、そのあたりの紐付けについては、TVシリーズや外伝を通して築いてきたラインを踏襲しながら進めています。それが1つのルールといえばルールですかね。
(後編に続く)