『鉄血のオルフェンズ』のスピンオフ作品として制作されている『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』。アプリで見ることができる作品として、長井龍雪監督をはじめメインスタッフが再集結し鋭意制作中です。『ウルズハント』の展開に先駆けて、リレーインタビュー企画がスタート!
第1回は『鉄血のオルフェンズ』のプロデューサー、小川正和さん。
現在はSUNRISE BEYONDの代表取締役社長でもある小川さんが、『ウルズハント』を立ち上げた経緯、そしてアニメーションとアプリの連動をどのように進めているのか伺いました。

「『鉄血のオルフェンズ』の世界観の中で新たな物語を作ろう」と考え、生まれたのが『ウルズハント』
アプリ内で楽しむことができるスピンオフ作品『ウルズハント』ですが、『鉄血のオルフェンズ』シリーズにおける新作構想は以前からあったのでしょうか?
構想自体は、TVシリーズ50話のシナリオ打ちが終わった段階からありました。それとは別に、ゲーム側のプロデューサーである藤原(康則/バンダイナムコエンターテインメント)さんとも、なにか一緒にやれると良いですね、という話はしていたんです。『鉄血のオルフェンズ』は有難いことに10~20代のファンの方々も多く、認知度も高い。だとしたら、そういった層に親しみのあるスマートフォンアプリの形で新作をリリースするのが良いのではないか、ということでまとまりました。
単純にTVシリーズの続編、ということではなかったんですね。
TVシリーズはそれ自体大きなひとつのまとまりとして捉えているので、新作を作るならばどのような内容にするべきか、長井(龍雪)監督とも話し合いましたね。
まだPVの音楽はプロトタイプなので、アップデートしてゆきます。
アプリ内でオリジナルのストーリーが展開していくのも、その段階で決まったのでしょうか?
そうですね。当初はここまでオリジナルストーリーを作る予定はありませんでした。むしろ、ゲームを主体的に考えていたので、プレイヤーが独自に鉄華団のような組織を作ってバトルを楽しめるものにするイメージでしたね。ただ、それだとアニメーション全体のボリュームが読めないこともあり、一旦仕切り直して長井監督と「『鉄血のオルフェンズ』の世界観の中で新たな物語を作ろう」と決めました。
P.D.323を舞台にした理由はどのようなものでしょうか?
TVシリーズの物語の後ではなく同じ時代で、ある程度自由に物語を描けるところという点を考慮し、第1期と第2期の間になりました。当初は第1期がスタートしたところから進める案もあったのですが、それだとTVシリーズの物語と調整する部分も多く難航しそうだなと。また鉄華団だけではなく、ギャラルホルン等、それ以外の組織や要素も盛り込めるようなストーリーを作ろうというところから、金星を舞台とした『ウルズハント』になりました。
デザインや設定の面では、MSV(※)を作っているような感覚に近い
アニメーション側のプロデューサーとして、アプリというメディアを使う上での違いや難しさはありましたか?
アニメーションパートからゲームパートにどう繋いでいくのかが『ウルズハント』のキモになると思うのですが、それは現在も検証中です。アニメーションの演出は長井監督が中心となって進めていますが、ゲームの演出はゲーム側のディレクターさんに任せる形です。互いがこれまで培ってきた能力を存分に活かしつつ、それをひとつの作品として成立させるために、構成を進めている段階です。例えば、機体がダメージを負ったときの「壊れ」はゲームでは表現し辛いので、アニメーションで補完したり。そういった細かな部分から検証を行っているところです。
アニメーションとゲームは密接な関係になるのは間違いないと。
そうですね。あと『ウルズハント』の大きなコンセプトとして、誰でも無料でストーリーを楽しめるものにしよう、ということは決めています。
『ウルズハント』のストーリーはどのように構成されているのでしょうか?
大筋は長井監督が発案されています。さらに今回は、TVシリーズに設定考証として参加されていた鴨志田(一)さんに、シリーズ構成として入っていただきました。ゲーム的な要素、外伝的要素も多い作品なので、TVシリーズとの整合性は逐一チェックしながら進めています。
本作ならではのデザイン的な特徴はあるのでしょうか?
当初、アプリはCGで表現するメディアなので、線が多くても良いかなと思って進めていました。ただ、アニメーションパートのボリュームが増えたので、そこは若干調整することに……(笑)。ゲームパートで新たなモビルアーマーも登場するのですが、その中には独創的なデザインの機体もあり、それはそれでCGで組むのが大変だったりと、バランスが難しいところはあります。ただ、TVシリーズよりはデザインの自由度は上がりましたね。武器も複数用意していますし、デザインや設定の面では、MSV(モビルスーツバリエーション)を作っているような感覚に近いです。
主人公のウィスタリオと三日月はまったく違うタイプ
金星を舞台にした物語ということですが、どのような特徴がありますか?
TVシリーズでは、辛く哀しい要素もあることを当初から想定していて、結末に辿り着くまでそこは貫き通した部分ではありました。『鉄血のオルフェンズ』シリーズ作品として、その世界観は維持しつつも、今回はゲームですので、より先を知りたくなる、プレイを続けたくなるような内容を心がけています。もちろん、『鉄血のオルフェンズ』のファンであればより楽しめる小ネタなども入れながら、はじめて触れる方にも入りやすい内容になっているかと思います。
鉄華団メンバーがどのように登場してくるのかは気になるところです。
基本的には新しいキャラクターたちのドラマを観ていただく前提で制作していますので、まずはそれを楽しんでいただければと思います。ただ、同じ世界なので、彼らの存在に言及するところはありますし、TVシリーズのキャラクターたちがどのように登場するのかは是非楽しみにしていただければと。
本作では主人公として、金星生まれのウィスタリオ・アファムが登場します。彼のキャラクターはどのように造形されたのでしょうか。
キャラクターの造形に関しては、長井監督の設定を基に伊藤悠さんに原案を描いていただいて、それをどうアニメーションとして落とし込むかをメインスタッフみんなで考えていきました。性格の部分では、ウィスタリオと三日月はまったく違うタイプです。『鉄血のオルフェンズ』で築き上げてきた世界観の中で、明るさだったり、少年らしさだったりとウィスタリオらしさを出していければと思っています。
『ウルズハント』において小川さんが仕掛けたいことはありますか?
この作品に関しては、まずはオリジナルのストーリーを楽しんでいただくのが一番ですね。
一方で、アプリ全体でいえば、キャラクターを自由に楽しみたいというファンの皆さんの希望が叶えられるように、フリーモード的な要素は欲しいなと考えています。例えば、自分の好きなキャラクターで部隊を組んだり、好きなモビルスーツに乗れるようになったり。そういった楽しみ方ができると、より愛着をもっていただけると思いますので。
『ウルズハント』は、これからのガンダムを考える上でのひとつの指標になる
『ウルズハント』のアニメーションは、小川さんが新たに代表取締役社長に就任された「SUNRISE BEYOND(以下、ビヨンド)」(2019年3月にサンライズの子会社として発足した、IPプロデュースグループ)で制作されています。どのような制作体制なのでしょうか?
今まで、『機動戦士ガンダムAGE』や『ガンダムビルドシリーズ』、『鉄血のオルフェンズ』などの制作を行ってきたスタッフが、作画に携わっているメンバーを含めビヨンドで合流した形になっています。
作画の体制はTVシリーズ本編とは変わらないのでしょうか?
TVシリーズのときは25話×2シーズンの計50本を、間に半年空いたとはいえ週一ペースで進めていました。そのときに比べると時間的制約は少なくなっています。今のところ、当時はスケジュール面で難しかった表現に取り組むことができたり、ディテールに気を配ることもできたりしていると感じています。1話分のシナリオも、TVシリーズと比べてもかなりのボリュームになっていて。それだけ張り切って作っていますので、期待していただけると幸いです。
「ガンダム40周年プロジェクト」も進んでいる最中ですが、『鉄血のオルフェンズ』もアプリでの新展開を迎えます。今後のアニメーション制作に対してどのようなビジョンがありますか?
ティーンエイジャー向けのガンダムを作る、ということは抱え続ける命題ですが、環境としては、好きなときに自分のタイミングで視聴出来ることが重要になってきていると感じています。今回のアプリにおける展開も、そのトライアルに近い側面もあります。
なるほど。
その中でドラマや戦闘シーンの魅せ方も変わっていくでしょうし、『ウルズハント』はそこに対するひとつの提案にもなるのではと思っています。40周年プロジェクトに関して言えば、宇宙世紀では『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』、『ガンダム Gのレコンギスタ』の公開がある中、『鉄血のオルフェンズ』としても新たな展開をアプリという新しいメディアで提示できることで、これからのガンダムを考える上でのひとつの指標になればと思います。
現在の進捗状況としてはいかがでしょうか?
アニメーションの映像制作に関しては順調に進んでいます。『鉄血のオルフェンズ』ファンの方にも、アプリではじめて作品に触れる方にも十分に楽しんでもらえるように、長井監督をはじめスタッフ一同、頑張っていきますので、リリースまでお待ちいただければと思います。
※MSV……モビルスーツバリエーションの略で、ガンプラや雑誌メディアで展開された「外伝」用に描き起こされた機体や、それにまつわる設定の総称。TVシリーズで登場した機体の派生機やパーソナル・カスタム機などが次々と生まれ、ガンプラやガンダムシリーズ全体の発展に繋がった。